コロナショックでマンション販売に急ブレーキがかかっています。景気の悪化にともない、販売価格も値下がりしていくのでしょうか。考えてみましょう。
マンション販売に急ブレーキ
コロナショックで、新築分譲マンション販売に急ブレーキがかかっています。理由は簡単で、モデルルームなどでの対面販売が規制されたからです。また、景況感も急速に悪化してきており、先の見通しがわからない状況で、住宅ローンを組む人も減っており、それが分譲マンション販売に陰を落としています。
ここ数年、新築マンション価格は上昇をを続けてきました。不動産経済研究所によれば、2019年の首都圏分譲マンションの1戸当たりの平均価格は5,980万円、面積当たりの単価は87.9万円/m2に達しています。2012年は平均価格4,540万円、平均単価65万円/m2でしたので、7年間で約1.3倍の販売価格となり、平均単価は約1.4倍に上昇していることになります。
新築価格に引っ張られる形で、中古マンションの成約価格も上昇を続けてきました。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、2012年の中古マンションの平均成約価格は2,500万円、平均単価38万円/m2でしたが、2019年の平均成約価格は3,220万円、平均単価は53万円/m2と、いずれも1.4倍となっています。
不動産価格の「平均」は立地条件などを無視していますので、平均がすべてを表しているわけではありません。そういう前提ですが、ざっくりといってしまうと、7年前に5,000万円で買えていた新築マンションが7,000万円に。3,000万円で買えていた中古マンションが4,200万円になったわけです。恐ろしいばかりの値上がりです。
マンションは暴落しない
しかし、ここへきて、「コロナショック」が不動産市況を襲っています。新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済の混乱で、景気はリセッション入りが確実視されています。マンションの販売価格にも影響を及ぼさずにはいられません。
ただ、過去の例を見てみると、リセッション入りした直後に不動産価格が暴落したケースというのは見当たりません。たとえばバブル経済がピークを付けた1990年以降も、不動産価格はある程度の値を保ちましたし、リーマンショックの時も同じです。新築に限っていえば、平均価格は1~2割程度下がることはあるものの、株のような大暴落にはなりません。
マンション価格がすぐに暴落しない理由はいくつかありますが、最大の理由はマンション価格は数年かかる一連のプロジェクトであり、景況感がすぐに反映されない、という点でしょう。土地の仕入れ値や建築費が高騰したなかで動き出したプロジェクトは、そうそう安値販売できないのです。
「買う人がいなければ値下げするしかないのでは?」という考えもあろうかと思います。それは確かにそうですが、実際は値下げするのではなく、供給を絞ることで調整をします。大手デベロッパーは経営体力がありますので、安値販売するくらいなら供給を絞って値を保つ道を選びます。新築マンションを必要としている人はいつでも一定数いるので、供給さえ絞れば値下げをする必要はなくなるのです。
かつては、中小のデベロッパーが運転資金ほしさに値下げすることもありました。しかし、最近の分譲マンションは大手デベロッパーがメインになっていて、経営体力に乏しい会社は少なくなっています。そうした事情もあり、新築マンションの投げ売りは構造的に生じにくくなっているという指摘もあります。
買い急ぐ必要はない
実は、「供給を絞る」という状況は、コロナショック以前から生じています。2019年頃からマンション市場は明らかな過熱感があり、発売戸数は減少してきているのです。どんどん上昇する価格に、買い手の需要がついていけず、契約率は低下傾向でした。
そうしたトレンドのなかで、コロナショックが起きたこともあり、新築マンション供給は絞られていくでしょう。価格的にも当面の天井をつけたといってよく、今後は緩やかに値下がりしていくでしょう。
とはいえ、新築マンションは適地が限られてきており、とくに都心など人気エリアでは、デベロッパーが売り急いでいる雰囲気は感じられず、値下げの情報も聞きません。
明らかな価格低下が起こるとすれば、郊外立地でしょう。郊外の新築分譲マンションは、買い急ぐ必要はありません。
また、今後、不動産の過熱感が収まった後に取得した土地が開発されるようになると、新築マンションの価格も下がっていくとみられます。それには短くても2~3年かかるでしょうから、じっくり待つといいいでしょう。どの程度下がるかは見通せませんが、立地によっては1割程度の値下がりはあり得るでしょう。
中古マンション特有の事情
一方、中古マンションの価格はどうでしょうか。中古マンション価格は新築マンション価格の影響を受けますが、まったく同じではありません。その理由はいくつかありますが、大きいのは住宅ローンの残債です。
マンションを売却する人の多くは住宅ローンの残債を抱えています。そのため、残債以上の価格で売ろうとし、そうでなければ売る判断を先送りします。結果として、築年数の新しいマンションほど値を保ちやすいのです。実際、リーマンショックの後も、築浅の中古マンション価格は大きくは下がりませんでした。
要するに、中古マンションが出回りやすいのは高く売れる景気のいいときで、逆に景気が悪くなると、「今売る必要はない」と考える人や、残債で売るに売れない人が抱え込むので、中古マンションの流通が絞られます。結果として、築浅中古マンションは供給が維持され、値下がりしにくくなるのです。
築年数の古い中古マンションに関しては、リフォーム済物件が増えていることが、価格が下がりくい理由となっています。業者がリフォームした物件は、買値より2割程度高く売られることが多く、結果として中古マンション価格を底支えしています。
もちろん、景気が悪くなれば、経済的な事情で状態のいいマンションを手放す人も出てきますので、手頃で良質な物件が出てきやすいタイミングでもあることは事実です。とくに、リセッションの入口は「早めに売っておこう」と考える人もいますので、質のいい物件の買い時ではあります。
ただし、いい物件はすぐ売れるのが中古マンションの特徴です。お目当てのエリアの情報には目を光らせておくといいでしょう。