マンションの基本的な構造部材がコンクリート。「コンクリートなんてどれも一緒」などと思っていませんか? そんなことはありません。ここでは、マンションの耐久性を左右するコンクリート強度について、ご説明しましょう。
30Nなら100年持つ
マンションの寿命を左右するのが、コンクリート強度です。コンクリート強度は、「設計基準強度」という数値で表示されます。これは、1平方ミリメートルあたりどれくらいの圧力をかけて壊れないかを計り、ニュートン(N)で表示するものです。たとえば、30Nというのは、重量3000トンを1平方メートルで支えることができる強度となります。この数字を「N値」といいます。
コンクリート強度が高いと、マンションの寿命も長くなります。日本建築学会が定めた耐久設計基準強度では、18Nで30年、24Nで65年、30Nで100年の間、大規模修理が不要とされています。
ここでいう大規模修理とは、コンクリートの躯体に対する修理が不要という意味で、建物外装全体を修繕する「大規模修繕」とは意味が異なります。要するに、コンクリートの耐久性を示す年数です。長期優良住宅の基準では、耐久性基準強度が30N以上です。
さらに、耐久設計基準強度では「供用限界期間」も示されていて、18Nが65年、24Nが100年となっています。30Nは供用限界期間は示されていません。
タワーマンションには「150N」も
計画共用期間としては、18Nが「一般」、24Nが「標準」、30Nが「長期」、と表現されています。少し前までは21N程度のマンションが多かったですが、最近の中低層マンションは24N程度が主流です。超高層マンションでは、60Nを超える超高強度コンクリートが使われています。タワーマンションでは、150Nという非常に強いコンクリートが使われていることもあります。
ただ、コンクリート強度は、一つのマンションですべて同じではありません。先ほどのタワーマンションでも、150Nが使われているのは1階部分のみ。上層階にいくにつれ、コンクリート強度は下がっていきます。理由は簡単で、下の階は上の階の重さを支える必要があるためです。
コンクリート強度を確認するには
コンクリート強度を確認するには、マンションの「設計図書」を見せてもらい、自分の階の「耐久設計基準強度」をチェックします。新築マンション場合は、モデルルームにありますし、中古の場合は、仲介業者に依頼すれば見せてもらえるでしょう。
ただ、この耐久設計基準強度は、あくまでも目安にすぎません。「60Nなら100年持つ」といっても、建築後100年経ったマンションは日本には存在しませんから、実証されたわけではありません。
逆にいうと、18Nなら30年で壊れる、というわけでもありませんし、24Nなら65年持つ、と保証されたわけでもありません。コンクリートは塩に弱いので、海に近いマンションなら設計強度よりも寿命が短いこともありますし、内陸でよく手入れされたマンションなら、24Nでも100年持つかもしれません。
N値が低くても大丈夫?
一般に、低層マンションのN値はタワーマンションに比べて小さいですが、低層マンションのコンクリートはタワーマンションのような重さを支える必要はありませんし、上空の強い風圧にさらされるわけでもありません。低層マンションのN値が低いのは、高い耐久性能を必要としていないから、ともいえます。低層マンションなら、N値が低くても、それ自体は問題ではありません。
ただ、新築物件を買うのなら、24Nくらいの物件にしておきたいところです。また、コンクリート強度が周辺の同じようなマンションより低いのなら、気をつけた方がいいでしょう。といっても、コンクリート強度の違いに気づくのは難しいことです。マンションを購入する際にモデルルーム巡りをして、こうした数値にも気を配り、自分なりの「相場」を形成しておくのがよさそうです。