最近の新築マンションで増えているのが「価格未定」の物件。着工するはるか前ならいざ知らず、モデルルームがオープンしているというのに「価格未定」を掲げているマンションすらあります。そんな時期まで価格が全く決まっていないわけはありません。なぜ、こんなことになっているのでしょうか?
間取り図に価格が表示されていない!
新規分譲マンションのホームページにある「物件概要」や「間取り図」。かつては、ここに価格が表示されているのが一般的でした。しかし、最近は価格を表示せず「価格未定」としているケースが少なくありません。
すでにできあがっているマンションで「即入居可」の物件ですら「価格未定」とされている場合があります。
こうした新築マンションの「価格未定」は、デベロッパーにとって集客の手口の一つです。購入検討者はホームページやチラシをみるだけでは価格がわからないので、モデルルームや販売事務所に行かなければ、そのマンションの値段を知ることができません。
モデルルームに行っても値段がわからない
ところが、まだ建築中のマンションの場合、モデルルームに行っても価格未定の場合が増えています。モデルルームで値段を尋ねても、正式な価格表は渡してもらえず、正式な価格は「検討中」と言われたりします。
価格帯だけを示した表を渡してくれる販売事務所もありますが、なかには「予定価格表」を見せてくれるものの、持ち帰りは不可で、「メモするだけにしてください」と言われる場合も。マンションという超高額な買い物のなのに、肝心の価格をなかなか教えてもらえないのです。
販売会社が値段を決めきれていない
これは、価格を出し惜しみしていると言うよりは、マンション販売会社が価格を決め切れていない、ということが原因です。
最近のマンション販売では、モデルルームが完成してもすぐには一般公開せず、その不動産会社に「会員登録」した会員にのみ告知し、来場してもらいます。
そして、モデルルームに来てくれた会員におおまかな「予定価格」を口頭で伝え、反応をみて価格を精査します。あるいは、モデルルームへの来場率を確認して、だいたいの価格を決めます。一般客にモデルルームオープンを告知するのは、この後です。
一般客がモデルルームに来はじめると、このときは「予定価格」や「価格帯」を知らせます。同時に、来訪客の想定価格も聞き出し、「予定価格」がそれとかけ離れていたら、再検討します。そうして、部屋ごとに細かく百万円、十万円単位の値付けをしていきます。
こうした段階を踏んで、正式な「価格表」を作成し、最終的にモデルルームの来場者に渡すのです。
値引き販売をしやすいように
ところが、これで終わりではありません。正式な価格表で販売開始したものの、契約率が悪い場合があります。そのときは、値引き販売をすることがあります。そのため、ホームページ上では「価格未定」の表記を続けるのです。すでに契約済みの購入者にばれないようにするためです。
マンションが完成してからも「価格未定」の場合もあります。完成したものの、完売していない場合、業者はさらなる値引きをしてでも売り切ろうとします。そのときにも、正式な価格を公式発表せずに「予定価格を伝えたうえで10%値引きする」という複雑な過程を踏む場合もあります。
提示された金額で判断しよう
こうなると、値引いたのか、もとの価格を安くしたのか、よくわかりません。そう、最終的には「正規価格がいくらだかわからなくする」というのも、価格未定が多くはびこる理由なのです。
マンションは値引き販売をするとブランドイメージが傷つきますし、先に契約した人から不満も出ます。そのため、価格公表をする戸数はなるべく絞っておき、非公式な価格から割り引いて公式価格にして販売する、という手法をとろうとするのです。
複雑ですが、購入者としては、「値引き交渉をした上で、提示された金額が妥当かどうか判断する」クセを付ければいいでしょう。