新築マンションを買うときに必ず訪れるのがモデルルーム。きれいなインテリアに惑わされがちですが、必ずチェックすべきなのは「設計図書」(セッケイズショ)という図面です。設計図書とは、建物を建てるときに必要な設計関係の図面一式をまとめたもので、マンションの販売センターには必ず備え付けられています。
ただ、この設計図書、かなり専門的。きちんと見るには相当な時間がかかります。ここでは、短時間でチェックできるポイントを簡単にまとめました。
地質調査書
デベロッパーがマンションを建てるとき、地面に穴を掘って地質を調査します。これを「ボーリング調査」といいます。地質調査書は、ボーリング調査の結果を示すものです。
ここでチェックすべきなのは「N値」。N値は、土の硬さの程度を示したもので、数字が大きいほど硬い土です。
N0は非常に軟らかく軟弱な土で、数値が上がるにつれ硬い土になっていき、N50が最大です。N50以上の地層もN50で示します。
N50であれば重い構造物でも支えることができます。したがって、高層ビルやタワーマンションでは、杭をN50の深さまで掘り、建物の基礎とするのです。
そのため、地盤をチェックするには、N50が地下どのくらいの深さにあるかをみるとわかります。一概にはいえませんが、おおむね深さ35m以内にこの層(N値50以上)があれば、優れた地盤と考えていいでしょう。
配置図
敷地全体に建物がどう配置されているかを示すのが「配置図」です。敷地の境界、建物の方位と位置関係がわかります。購入を検討している部屋の向きが正確にわかりますし、ベランダから隣地までの距離なども数字で確認しておきます。
タイプ別平面図
住戸のタイプ別に、間取りを詳しく表示したものが「タイプ別平面図」です。購入を検討している住戸の間取りを確認すると同時に、上下左右の間取りも必ず確認しましょう。
寝室の上がリビングだったり、隣が水回りスペースだったりすると、寝るときに気になるかもしれません。できるだけ、寝室の上は寝室、水回りの上と横は水回り、という間取りがいいでしょう。
矩計図
矩計図は、「かなばかりず」と読みます。矩計図とは、各階の垂直方向の寸法を仕様を描いたものです。マンションの一部を切断して、寸法などを細かく記入した詳細な断面図です。
矩計図でわかることはいくつかありますが、重要なのは階高です。階高とは、コンクリートの床から上階のコンクリートの床までの高さのこと。高級マンションほど階高が大きくなる傾向があります。
そのほか、購入を検討している住戸について、室内の天井高、床と天井の仕上げなどを確認します。最近のマンションなら、二重床、二重天井になっていることが多いですし、そのほうがいいでしょう。階高は2900ミリ以上あれば安心です。
展開図
展開図とは、各住戸の周囲の壁を室内側から横から見て描いた図です。壁の仕上げやドア、窓の位置、寸法、仕様などがわかります。ドアや窓の形などが一目でわかりますので、イメージ通りか確認しておきましょう。
床伏図、梁伏図
真上から見下ろした図面を「伏図」と呼びます。床の状態を描いたものを「床伏図」、梁の状態を描いたものを「梁伏図」といいます。
床伏図は、床の仕上げ材を剥いで上から見た図面で、床の構造を示します。梁伏図は、軸組の様子を示します。マンションの床の厚さや梁の位置を確認します。スラブ(床のコンクリート)で段差がある場合(段差スラブ)、将来のリフォームに影響します。
特記仕様書
図面に記載されていない材料や施工方法、仕上げなどで、注意すべき点を記載したリストが「特記仕様書」です。重要な項目が書かれていることが多いので、必ず目を通しましょう。
いろんな図面を何度も見る
設計図書を読み解くカギは、「いろんな図面を何度も見ること」。
モデルルームに行ったときに、上記のポイントだけでも絞って見ていくと、だんだんその内容の差異がわかるようになっていきます。すると、「このマンションは高級仕様だな」とか「このマンションはコストを切り詰めているな」などということも、なんとなくわかっていきます。
コストを切り詰めるのが悪いわけではありません。コストを切り詰めたマンションなら、その分価格が安ければいいわけです。つまり、価格相応のマンションかどうかを見極めるのに、設計図書を読み解く力が必要になってくるのです。
もちろん、設計図書は、価格を知るための手がかりだけではなく、遮音性能や修繕のしやすさ、バリアフリー対応など、さまざまなことを教えてくれます。自分が重視するポイントに対応しているマンションかを、知ることができる図面なのです。