2020年東京オリンピック・パラリンピックの選手村跡地のマンションが「晴海フラッグ」。いよいよモデルルームもオープンし、話題を集めています。このマンションの魅力と弱点などを徹底解説しましょう。
総戸数5,632戸のビッグプロジェクト
「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」は、東京都中央区晴海五丁目の再開発事業です。2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村の宿泊施設を中心に、エリア全体を住宅地として開発するビッグプロジェクトです。
オリンピック大会に備え、地上14~18階建ての中層住宅を21棟、地上3階建て商業施設1棟を整備します。大会後はこれらを賃貸・分譲住宅に改修。新たに地上50階、地上1階、高さ約180mのタワーマンション2棟を新設します。
全体の総戸数は5,632戸。このうち4,145戸を分譲します。建物の改修工事は2022年秋に完了し、2023年3月に入居が始まる予定です。タワーマンションは2021年1月に着工し、2024年3月に竣工する予定です。
エリア総人口は約12,000人を想定しています。現在進行中の再開発としては、東京23区最大規模です。オリンピック選手村跡地という話題性もあり、注目を集めています。
大手11社が結集
デベロッパーは、三井不動産レジデンシャルを筆頭とした大手11社。三井不動産レジデンシャル、三菱地所、野村不動産、住友不動産、住友商事、東急不動産、東京建物、NTT都市開発、新日鉄興和不動産、大和ハウス工業、三井不動産の各社です。
2019年4月末に、ついにモデルルームがオープンし、多数の来場客を集めています。
分譲マンションの間取りは2LDKから4LDKで、5,000万円台から1億円を超える部屋まで、幅広い価格帯を取りそろえます。
最多住戸専有面積帯は85㎡台で、都内のマンションとしてはゆったり。平均坪単価は200万円台後半とみられ、このエリアとしては高額ではありません。
中古住宅である
では、「晴海フラッグ」は買いなのでしょうか?
まず、おさえておかなければならないのは、選手村で使った建物を改装して販売した物件は、「中古住宅」の扱いで、新築ではありません。
もちろん「中古」とはいうものの、選手村として数ヶ月使われただけなので、「新品同様」「新古マンション」という程度です。にもかかわらず、周辺のマンションに較べて値頃感があるので、価格としては魅力的です。
東京駅も徒歩圏内
次に気になるのが立地です。
公式ホームページでは、銀座駅まで約2.5キロ、東京駅まで約3.3キロを謳っています。実際には、マンションの棟により少し距離が伸びるでしょうが、銀座、東京駅まで3~4km圏という近さです。
なんといっても、東京駅まで、歩こうと思えば歩ける距離です。東京駅徒歩圏のマンションが坪300万円以下で購入できるというのは、大きなチャンスにも思えます。
駅まで遠すぎる
ただ、交通の便はいいとは言えません。最寄り駅は都営大江戸線の勝どき駅ですが、徒歩16~21分かかります(棟による)。
しかも駅まで歩こうとすると、長い橋を渡り、運河を越えなければなりません。毎朝歩いて通勤するのに、徒歩20分は遠すぎます。
さらに、勝どき駅は、最近混雑がひどく、乗車まで行列することもあります。
BRTは期待できるか
そこで期待されているのが、東京BRTです。「BRT」とはBus Rapid Transit(バス高速輸送システム)の略で、運行の遅れが少なく、通常の路線バスよりも多くの乗客を効率よく輸送できるという特長があります。
晴海地区には虎ノ門・新橋発着のBRTが導入予定で、分譲開始の2023年時点で本格運行を開始している予定です。これに乗れば、新橋駅まで10分ほどで到着できます。
新橋までバス停2つですから、乗ってしまえばすぐでしょう。
しかし、BRTといっても、しょせんはバスで、輸送力に限りがあります。現時点の予定では、晴海5丁目から新橋方面へはラッシュ時に10分間隔の運転です。
連節バス1台に150人を詰め込んだとしても、毎時900人を運べるだけで、1万人が住むエリアの通勤・通学需要をまかないきることはできません
本数が足りなければ、ある程度、増発されるでしょうが、BRTが万全の輸送機関と信じきるだけの情報はありません。
ちなみに、普通の路線バスも走っています。東京駅丸の内南口を晴海埠頭を結ぶ路線で、途中、有楽町駅前や勝どき駅前を経由します。晴海埠頭~有楽町駅前を20分ほどで走ります。
地下鉄はできるのか?
晴海通りかその近くに臨海部地下鉄を通す構想もあります。詳細は未定ですが、地下鉄が実現した場合、晴海トリトンスクエアの南側付近に駅ができると予想されています。晴海フラッグからは、徒歩8~12分程度の距離です。完成すれば、地下鉄駅から徒歩10分程度になるわけです。
この地下鉄は、東京駅~銀座駅~国際展示場をつなぐ路線で、つくばエクスプレスへの乗り入れも予定されています。そのため、実現すれば晴海トリトンスクエア駅から銀座、東京駅まで数分で結ばれることになります。秋葉原やつくばへも直通ですし、期待は大きいです。
ただ、臨海部の地下鉄構想は、計画が緒に就いたばかりです。できるかどうかは定かではありませんし、実現するにしても、臨海部地下鉄は、海底を掘るため大深度にならざるをえず、工期がかかります。着工から完成まで10年くらいかかってもおかしくありません。
それまでの生活を考えると、地下鉄をアテにするのは、やめたほうが良さそうです。
マンションの価値は立地が9割です。確実なのは、「勝どき駅徒歩16~20分」ということだけですので、交通アクセスについては、よくよく考えた方がいいでしょう。
育児環境は?
エリア内には小中学校が作られます。当然、居住人口に対応していると思われますので、その点は心配なさそうです。
ただ、保育園や学童保育などに関してはどうなるかわかりません。育児世帯が多数入居するでしょうから、保育園不足が生じる可能性はあるでしょう。
こうした再開発エリアでは、子育て世代が一気に入居しますので活気はでますが、いろんな競争が激しくなる傾向は否めません。
懸念が大きいのは、進学でしょう。エリア内に小中学校は作られますが、私立への進学を希望される方も多いでしょう。しかし、交通アクセスが限られるため、通える私立学校が限られてしまうと言う難点があります。
中学まで公立に通わせる、という方ならそれほど気にならないでしょうが、小中学校受験を検討している方は、少し考えた方が良さそうです。
入居日が遠い
入居日が遠いことにも、気を付けたほうがいいでしょう。2019年7月に販売開始される物件の入居予定時期が2023年3月です。なんと4年後です。棟によっては、もっと入居時期は遅くなります。
いま、入居を計画している人でも、4年後には家族の状態が変わることもあるでしょう。ローン金利がどうなっているかもわかりません。そう考えると、あまりに早く契約してしまうのはどうかとも思います。
販売は何期にも分けられますので、そんなに買い急ぐ必要はないのでは、と思います。
リセールバリューは?
リセールバリューも気になりますが、これは公共交通の今後の充実具合によるでしょう。BRTの運行が安定すれば、新橋駅までバスで10分程度という利便性はそれなりに評価されると思います。
臨海部地下鉄ができ、晴海トリトンスクエア近くの駅から徒歩10分程度になれば、リセールバリューは上がるでしょう。
晴海フラッグは、売値がそれほど高くないので、下値不安はあまりない物件です。一方で、地下鉄ができれば資産価値が上がるのは間違いないので、上値は狙えます。その意味では、資産価値としては悪くない物件だと思います。
ただ、湾岸地域にはマンションが多いですし、地下鉄もいつできるのか(できないのか)、分かりません。近くに大規模な賃貸棟があるため、分譲棟を賃貸に回しても借りては限られそうです。
そうしたことを勘案すると、リセールバリューを期待して購入する物件とはいえません。
また、先進的な設備のぶん、管理費や修繕積立金は高めのようです。その点もご注意ください。
狙い目のビレッジは?
晴海フラッグのエリアは4つに別れています。「シー・ビレッジ」「サン・ビレッジ」「パーク・ビレッジ」の3つが分譲エリア。「ポート・ビレッジ」が賃貸エリアです。
ポート・ビレッジが環状2号に近く、交通アクセスは最も便利そうですが、中央清掃工場の目の前だからか、分譲マンションはありません。
眺望が良さそうなのは、南東で海に面するシー・ビレッジでしょう。環状2号にも近いため、道路の利便性も良さそうです。
商業施設に近いのはサン・ビレッジです。BRTの始発となるマルチモビリティステーションにも近いというメリットがあります。
パーク・ビレッジは一番奥になるため、住み心地は良さそうです。サン・ビレッジもパーク・ビレッジも、西側に晴海ふ頭公園があるので、西側に行くほど住環境は良さそうです。
ということで、どのエリアにも長所があり、好みで選べばいいでしょう。筆者なら、マルチモビリティステーションに近い棟を選びます。やはりマンションは、交通利便性が一番だと思うからです。
再開発エリアの将来性
「晴海フラッグ」にマンションに狙いを付けている人は多く、早くもモデルルーム見学の予約が殺到しているとのことです。それだけ多くの人が関心を持っていると言うことでしょう。
いろいろ書きましたが、「晴海フラッグ」の魅力は、やはりゼロから設計された再開発都市である、ということだと思います。水素を使った先進的なエネルギー供給や、洗練され機能的なマンション設備、必要十分な共用施設など、他のエリアのマンションでは味わえない環境には、高い魅力があります。
こうした先進的な再開発エリアは、将来にわたって資産価値が維持されやすいですし、リセールバリューの心配をあまりしなくていいのもメリットです。なにより、三井不動産を筆頭とした11社が、国策のオリンピックの施設として作った建物であることに、安心感を覚える人も多いでしょう。
とはいえ、アクセスの悪さはやはり気になります。お子さんの受験を考えている人は、通学エリアにどんな学校があるかを再確認してからのほうがいいでしょう。