マンションの住宅性能表示の「1.構造の安定」では、耐震性、耐風性、耐積雪性についての3段階の等級がつけられています。このなかで、特に重要なのが耐震性を示す耐震等級です。その意味を解説しましょう。
建築基準法の耐震性能
マンションの耐震性能の考え方は、建築基準法をベースにしています。建築基準法では、耐震性能は以下のように2種類の評価があります。
1 数百年に1度発生する地震(東京では震度6強から震度7程度)の地震力に対して、構造躯体が倒壊、崩壊しない
2 数十年に一度発生する地震(東京では震度5強程度)の地震力に対して構造躯体が損傷しない
1の震度6強から震度7程度というのは、かつての東日本大震災や阪神・淡路大震災クラスです。こうした激しい地震の際に、構造躯体(マンションの建物そのもの)が倒れたり壊れたりしない、ということです。
逆にいえば、倒れたり壊れたりしなければ、多少、柱が折れたり壁が崩れたりしても仕方がない、という考え方ともいえます。建築基準法では、震度6から震度7では、壁が崩れても人命が損なわれなければOK、ということです。
そのため、実際に東日本大震災クラスの地震に襲われたら、補修費用がかかったり、場合によっては建て替えが必要になる可能性もあります。
2の震度5強というのは、年に数回は日本のどこかで起きている程度の地震です。そうした規模の際は、マンションそのものが無傷でなければならない、ということです。
建築基準法の耐震性能をまとめると「震度5でも損傷しない、震度6でも倒れない」ということです。これが法律が規定する最低限の耐震性能です。
住宅性能表示の「等級」の意味は?
さて、ここからが住宅性能表示の話です。新築マンションの住宅性能表示における耐震等級は、3段階になっています。「等級1」は上記の建築基準法レベル、「等級2」はその1.25倍の耐震性能、「等級3」は1.5倍の耐震性能です。
つまり、「等級1」であっても、震度6強から震度7程度の地震でも人命が損なわれないように造られています。建築基準法の基準を守って造られていれば、「等級1」がもらえるわけです。
「等級2」「等級3」となるにつれ、マンションの建物はより頑丈になります。ただ、いずれのマンションでも、基本的に東日本大震災レベルの地震でも、バタリと倒れたりすることはないように造られています(そのはずです)。
ほとんどの新築マンションは「等級1」
マンションの耐震性能を上げるのには巨費がかかります。そのわりに、購入者は耐震性能をあまり重要視しない傾向があります。そのため、デベロッパーも耐震性能を上げる努力に消極的です。耐震性能が「等級2」や「等級3」のマンションは、それほど消費者受けしないわりに、価格が上がりすぎるため、デベロッパーは作りたがらないのです。
最近の調査では、「等級3」のマンションはほとんどなく、「等級2」も2%程度にすぎず、大多数の新築マンションは「等級1」というデータもあります。
「等級1」でも、東日本大震災に耐えられるとは書きましたが、万が一大震災が起きれば、その補修にかかる費用がいくらになるのか、見当もつきません。万一に備えるなら、多少価格が高くても「等級3」が理想ですが、一部の高級マンションにしか導入されていませんから、選びたくても選べません。現実的な理想は「等級2」といえます。
なお、免震構造のマンションについては、2007年から表示が追加され、等級とは別で、その旨が表示されています。免震構造マンションは耐震等級の評価対象外です。