住宅街のブランドとしては、都心部では広尾や松濤、郊外では田園調布や成城学園前、関西では芦屋の六麓荘などがあります。こうしたブランド化した住宅街では、住宅価格は高く維持され、マンションの資産価値も維持されやすいでしょう。
では、最近人気のある豊洲や武蔵小杉は、将来、新たなブランド住宅街として定着するのでしょうか。
ブランド住宅地の概念とは?
これまでのブランド住宅街は、一戸建ての住居エリアがメインでした。用途地域は第一種住宅専用地域で、土地の分筆規制などもあり、一戸あたりの土地が広いのが特徴です。そういう意味では、豊洲や武蔵小杉は、田園調布や芦屋のような「ブランド住宅街」にはなりえません。
ただ、それはこれまでの概念で「ブランド住宅街」を定義した場合の話。これからの時代、ブランド住宅街の概念すら変わってくるのではないか、と思います。
将来にわたって資産価値が維持されるか
ブランド住宅街の定義はいろいろありますが、重要なのは「資産価値が維持されるか」という点。有名な広尾ガーデンヒルズは、築30年以上経ったマンションが、新築時より高値で取引されています。大事なのは、地価そのものでなく、経年で資産価値が下がらないか、と言う点です。
つまり、地価が広尾や松濤に及ばないような、築年数を経ても資産価値が下がらないエリアなら、十分ブランド住宅街と言えます。
そのためには、現在住んでいる世帯が高齢化した後、次の世代がその街に住みたがるか、が大きなポイントになります。たとえば、高島平は高度成長期には人気のエリアでしたが、世代の入れ替わりは進んでいません。
そのため、新たに移り住む人が減り、マンションの買い手が増えないため、資産価値も緩やかに落ちています。つまり、ブランド住宅街にはなりきれませんでした。
上手に世代交代ができるか
高島平に限らず、高度成長期に造成された多くの新興住宅地は、ブランド化するどころか、退潮に向かっています。
その意味で、ブランド住宅街とは、うまく熟成した住宅街といいかえることもできます。きちんと熟成して、何世代でも受け継がれる伝統ができて、初めてその都市はブランド化されるといえます。
となると、豊洲や武蔵小杉がブランド住宅街になれるかは、今後、上手に世代交代ができる街になるかどうかにかかっています。答えは未知数としか言いようがありません。
マンションを建て替えていけるか
豊洲も武蔵小杉も、高層マンションを機軸とした新興住宅地です。マンションは一戸建てと違い、建て替えが容易ではありません。そのため、ある時期を過ぎると、若い世代の流入が止まり、世代交代が進まなくなる可能性もあります。そうなると、住宅地としてのブランド価値は緩やかに落ちていくでしょう。
これまでブランド住宅街として名をはせてきた田園調布ですら、最近は高齢化の波が押し寄せていて、うまく世代交代しているようには見えません。田園調布は東急東横線の中央部に位置し、鉄道利便性は高いので、今後も住宅地としての存在価値が失われることはないと思います。しかし、かつてのような圧倒的な存在感からすれば、やや衰退しているといえるかもしれません。
そうした事例を見ると、豊洲や武蔵小杉は、マンションが上手に建て替えられていけるような状況になるかどうかが、一つのポイントになるといえるでしょう。